JOURNAL

お茶プロレシピ開発秘話
多彩な味わいを引き出す
「茶師のテクニック」
2025 年1 月、私たちはついに茶師とともに新しい「YOUBI プロレシピ」を完成させました。このレシピには、茶師の経験と技術、そして私たちの情熱が詰まっています。
すべての始まりは、静岡県掛川市での茶師との出会いからでした。お茶の奥深さを学び、もっと多くの人にその多彩な味わいを届けたいという想いが、このプロジェクトの原動力となりました。ここでは、開発に至った背景やわたしたちの思いをお届けします。

茶師の技術に触れた
静岡掛川での研修
私たちが「お茶の多様な魅力」を知るきっかけとなったのは、静岡県掛川市でのお茶研修ツアーに参加した時のこと。そこでは、赤堀商店 茶師であり代表の赤堀氏より、「茶師」の技術を体験。その中で学んだのは、コーヒーと同じようにお茶も淹れ方次第で味わいが大きく変化するという奥深さです。
「お茶の多彩な味わい」を届けたい という思いから始まった挑戦
ペットボトル飲料の普及により、家庭から急須が消え、さまざまな味や風味がコモディティ化しつつあるお茶。しかし、赤堀商店の赤堀社長の「もっと気軽に、多彩なお茶の味わいを楽しんでほしい」という熱い思いを伺いながら、私たちはその体験をユーザーに届けるための方法を模索してきました。
2022年、私たちが体験した「茶師が淹れるお茶の味」を、ドリップポッドを通して再現する試みに挑戦しました。しかし当時の技術では、湯温や湯量、抽出スピードの調整が限られており、その豊かな味わいを完全に表現することはできませんでした。

2023年 9月
YOUBI リリースによって本格始動
2023 年9 月、ついに「DRIP POD YOUBI」がリリース。この革新的なモデルは、湯温、湯量、抽出スピードを細かく調整することが可能に。従来モデルでは引き出すことが難しかった、「お茶のエスプレッソ」や「水出しで抽出したような甘みや旨み」など、多彩な味わいを再現できるようになりました。
YOUBI ローンチ後初出展である10月の展示会では、茶師の赤堀氏が東京まで足を運び、「これならいろいろな試みができる!面白い!」とその可能性を高く評価してくださいました。この一言がきっかけとなり、同年12月、赤堀商店 茶師 赤堀氏とともに「プロレシピ」の開発がスタートしました。

茶師が目指す味わいの
イメージを形にする設計者の役割
赤堀氏が目指したのは、” 一杯のお茶から甘味と程よい渋み、喉越しの余韻を楽しめる味わい”です。茶師が急須で丁寧に淹れるお茶は、蒸らしや抽出のプロセスによって、甘味、旨み、渋みが絶妙に調和し、喉越しに心地よい余韻を残します。この味わいを再現するため、プロレシピでは多くの検証が重ねられました。
赤堀氏の描く味わいのイメージを具体的な形にする役割を担ったのは、開発担当の松林氏です。松林氏は赤堀氏の理想とする味わいを実際の数値に落とし込み、設計者としての重要な役割を果たしました。二人三脚で取り組んだその努力の末に、理想のプロレシピが完成したのです。
プロレシピの開発を進めていくなかで、お茶の繊細な味わいを再現するために、さまざまな課題に直面しました。お茶の種類や用途に応じて異なる抽出条件を設計し、茶師の経験と科学的なデータを融合させながら、理想的な味わいを追求しました。

固定観念を越えた
“蒸らし工程” の挑戦
赤堀氏は、煎茶には一煎目で引き出される旨味と甘み、二煎目で感じられる程よい渋みがあり、この二つを絶妙なバランスで抽出することで理想の味わいに近づけると考えていました。このアイデアを具現化するために、蒸らし工程や湯温、抽出スピードなど、さまざまな設定を徹底的に検証しました。
「煎茶の抽出では、長年『蒸らしは70℃で行う』という固定観念がありました。しかし、YOUBI では蒸らし工程の温度が固定されていたため、その条件下で理想の味わいを実現するための調整には試行錯誤を重ねました。」と松林氏は当時を振り返り語ります。松林氏は従来の考え方にとらわれることなく、蒸らしと抽出を別々の工程として再定義。この柔軟な発想と緻密な調整によって、甘味、旨み、渋みが調和した一杯を完成させることができました。固定観念を越えた挑戦が、新たな可能性を切り開くレシピを生み出しました。

完成度の高い
既存商品を超える試み
スタンダードレシピで淹れても完成度の高い味わいの「静岡まろみ焙じ茶」に対し、さらなる魅力を引き出す新たなアプローチが求められました。
この挑戦について、開発を担当した松林氏はこう語ります。「既存の味わいをどの方向性で進化させるか悩む中で、大胆な条件変更を試みました。より芳ばしさを引き出す方向性に振り切り再設計を行うことで、プロレシピならではの独自性を生み出すことができました。」まろやかな甘さが特徴の味わいとは対照的に、焙じ茶ならではの「芳ばしい香り」をさらに際立たせることに注力。従来よりも芳ばしい香りを強調しつつ、「渋み・苦み」を抑えた理想のバランスを追求しました。そのために抽出量や条件を細かく検証し、繰り返し試作を重ねることで、新たな魅力を引き出すレシピが完成しました。

一杯のお茶がもたらす、
心ほどける豊かな時間
湯温、湯量、抽出スピードを組み合わせたYOUBI のプロレシピは、まるで茶師が一杯一杯丁寧に淹れるかのような味わいを、家庭で手軽に楽しめるよう設計されています。このレシピによって、赤堀社長が追求してきた「多彩なお茶の魅力」が、より多くの人々のもとへ届けられるようになりました。
一杯のお茶を通じて、一旦手を休め、香りと味わいにじっくり向き合う時間を大切にしてほしい̶̶そんな想いが込められています。ぜひ、茶師の技術と情熱が詰まったその一杯で、お茶がもたらす特別な体験を味わってください。