JOURNAL
YOUBI開発ストーリー
【デザインコンセプト】
2021年にスタートした「DRIP POD YOUBI」の開発プロジェクトにおいて、これまでにないコーヒーマシンのデザインはどのように生まれたのでしょうか。コンセプトワークを担当したWELCOMEの藏所知司さんが、デザイナーの二俣公一さんにお話を伺うインタビューの前編です。
「普遍的な佇まい」のプロダクトを目指して
藏所:「DRIP POD YOUBI」のコンセプトを考える中で、私たちの頭に真っ先に浮かんだデザイナーが二俣さんでした。シンプルかつ、強度のあるデザイン、そして普遍的な佇まいを持つプロダクトにする必要がある。その部分でぴたりとはまったという感じでした。
二俣:スケジュール的に詰まっている時期で、しかも僕自身、白物家電は手がけたことがありません。一度はお断りをしようかとも思いましたが、WELCOMEさん、UCCさんにコンセプトを伺っているうちに「できるかも」という気持ちになりました。
藏所:頼んだ時点で、「コーヒーは飲みません」と言われたらどうしようかと思いました(笑)。しかし、何とかお受けいただいて、当時の最新モデルだった「DP3」*を送って、使っていただいたんですよね。その感想はいかがでしたか?
二俣:使ってみてまず思ったのは「おいしい」ということでした。コーヒーは仕事中もプライベートでも必需品ですが、あまりこだわって飲んでいるわけではなかったので驚きました。家でも、職場でも使っていましたね。
「足りないもの」「不要なもの」そして「本当に必要なもの」を整理する
藏所:デザイン面でのアプローチは、どのように考えていったのでしょうか?
二俣:やはりほかのデザインと同様に、必要とされる機能や意味を想定したうえで、足りないもの、逆に不要なものを整理していきました。こうして本当に必要なものだけを具現化すると、それまでに見たことない形になるんです。これは建築でも、プロダクトでも同じですね。
藏所:機能(用)の根源を探っていくと、新しい形(美)が生まれていく。「DRIP POD YOUBI」の由来のひとつにもなっている「用と美」は、最初から頭の片隅にあった言葉なのですが、あまり表に出してはいませんでした。伝えることで「民藝」のイメージが強くなってしまうのは良くないかなと思ったからです。しかし、UCCさん、二俣さんと話し合うなかで、これは出してもいいかなと考えるようになりました。
二俣:これまでやってきたことと、WELCOMEさんから出てくるキーワードは合致していたので、大きな方向性としてあまり迷うことはなかったですね。
藏所:最初に見せていただいたデザインは、かなり最終形に近いものでしたね。
二俣:はい。エンジニアさんと協力しながらDRIP PODの構造を理解しつつ、機械のレイアウトはどうするか、体積はどうするかなどを考えていきました。外観だけをコントロールするのではなく、機能を過不足なく活かすデザインはどのようなものか、つねに意識しながら進めることが不可欠でした。最初は2案ありましたが、よりシンプルなこちらに決まって良かったと思います。
* DP3…DRIP POD YOUBIの一つ前のマシンモデル。2020年1月に発売。
Profile
二俣 公一(ふたつまた こういち)
二俣スタジオ (KOICHI FUTATSUMATA STUDIO)
福岡と東京を拠点に空間設計を軸とするケース・リアル(CASE-REAL)とプロダクトデザインに特化する二俣スタジオ(KOICHI FUTATSUMATA STUDIO)の両主宰。国内外でインテリア・建築から家具・プロダクトに至るまで多岐に渡るデザインを手がける。
藏所 知司(くらしょ ともじ)
株式会社ウェルカム | クリエイティブ・グループ 事業開発室
ブランド事業で培った経験を活かし、さまざまな開発事業や街づくりをプロデュース。大切にしているのは、企画して終わり、つくって終わりではなく、「事業の成長に対する提案であり、形づくりである」こと。